地球温暖化は手遅れかもしれないでは何ができるのか戦争している場合ではない

によって豪雨が発生するメカニズムとは 地球の平均気温が上がるにつれて、雨の激しさが増している。温暖化が進むと、空気中の水分量も増えるからだ。加えて、これまで雪として降っていたものが雨として降るようになったことで、新たな災害の原因にもなっている。 Flood waters flow over a carpark in South Korea. Buildings fill background and trees fill middle ground. PHOTOGRAPH: ANTHONY WALLACE/GETTY IMAGES 気候変動がもたらす奇妙な副作用のひとつに、雨への影響がある。ほとんどの人は地球温暖化と聞くと、猛暑を想像するだろう。実際のところ、米国内で最も多くの死者を出している自然災害は猛暑だ。しかし同時に、気候変動によって降水量が極端に増えるリスクも上がっている。気候変動の影響を受けると概して、雨はより多く降り、暴風雨はより激しくなるのだ。 これは直感に反しているかもしれないが、物理学的に証明されている現象である。気候変動がここまで深刻化する前から、洪水は人間社会に大きなダメージを与えてきた。それを踏まえると、大雨が増えるとどれだけ大きな影響があるか、想像できるだろう。 気温が上がると空気中の水分量も増える 雨は地球の汗のようなものだ。汗をかいて皮膚から水分が蒸発するとき、熱も共に蒸発する。同様に、陸や海から蒸発する水分は、その表面から熱を奪う。地球は表面の熱を発散させることによって、太陽光によって上がった温度を下げる必要があるが、そのうちの半分は水分の蒸発による冷却効果によって賄われているのだ。そして蒸発した水分は、やがて凝結して雨となる。 10のマップとグラフにみる、2023年の酷暑と気候変動の今後 BY MATT SIMON 大気中の温室効果ガスは、地球が宇宙に熱を逃がすのを妨ぐ毛布のような存在だ。温室効果ガスの量が多ければ多いほど、この毛布は“厚く”なる。その結果、地球はより多くの水分を蒸発させて冷却を図ろうとする。綿のシーツよりも羽毛布団をかけて寝ているほうが汗を多くかくのと同じ原理だ。 「これは基本的なエネルギーバランスの問題なのです」と語るのは、シカゴ大学の大気学者であるリズ・モイヤーだ。モイヤーは気候変動が降水量に及ぼす影響について研究している。「温室効果によって気温が高まることによって、地球はより多くの水分を蒸発させてエネルギーを発散させようとします。上空に上がった水蒸気は雨となって降るので、結果として降水量が増えるのです」 大気学者たちの理論はクラウジウス・クラペイロンの式を根拠にしている。この式によると、温度が1C°上がるごとに、空気中に含まれる水分量は6~7%上昇する。単純計算して考えれば、暴風雨が発生した際の降水量もそのぶん増えることになる。 とはいえ、「暖まった大気がより多くの水分を保持するという事実だけでは、平均降水量がどのように増加するかはわかりません」とモイヤーは指摘する。「なぜなら、具体的な変化はその時々の物理的な状況によって決まるからです。例えば、大気中の水分量が増えたとしても、雨が降る回数の平均は増加しない場合も考えられます。それぞれの暴風雨が激しくなっても、雨が降る回数は変わらない、などです」。言い換えれば、雨が降る回数は増えず、単に平均的な湿度が上がるだけの場合も考えられるのだ。 全南大学の気象学者であるハム・ユグンによると、気象の変化にはさまざまな自然の要因が関係している。そのため、これらを取り除いて気候変動の影響を分析することが非常に難しくなっており、これが長い間、気象学者たちの悩みの種になっているという。(全南大学のある韓国は、頻繁に洪水が発生する国でもある)。 そもそも降水とは非常に複雑な現象で、多くの要素が絡み合っている。気候変動に関係なく、前年に比べて降水量が増えることもあれば、減ることもある。「降水にはさまざまな自然の要因が関係しているので、ほかの大気現象に比べても変動性が大きくなります」とハムは語る。「降水にはもとから変動性があるので、気候変動のサインを見出すことが非常に難しいのです」 集中豪雨のニューヨークで洪水、歴史ある都市が容易に“水没”する時代がやってきた BY AMANDA HOOVER、MATT SIMON ハムはつい最近、同僚の研究者たちと一緒に、ディープラーニング(深層学習)モデルを使って降水量を解析し、ここ数十年のデータから気候変動の兆候を見出す研究を実施した。「以前までよりも大雨が増えていることがわかりました。特に今年は東アジアと米国東部において、この傾向が顕著に見られます」とハムは説明する。「このように大雨がより頻繁に発生している原因は、地球温暖化にあると結論づけることができます」 WATCH Climate Scientist Answers Earth Questions From Twitter Most Popular 一部地域だけが涼しい“地球温暖化の穴”が出現した理由 BY MATT SIMON 恐竜はいかにして滅びたのか? その原因についてコンピューターモデルが明らかにしたこと BY MATT SIMON DJI の「Osmo Action 4」は磁気マウントシステムや前面のディスプレイを備え、日常的な使いやすさでGoProを上回る:製品レビュー BY SCOTT GILBERTSON 米国の西海岸でも降水量が増加している。湿度が上昇した結果、太平洋を横断して米国に上陸する「大気の川」と呼ばれる水蒸気帯が、暴風雨を発生させて大きな被害をもたらしているのだ。「海面の温度が1C°ほど上昇すると、大気の川によってカリフォルニアに運ばれてくる水分量も増加します」と語るのは、アルゴンヌ国立研究所でシニアサイエンティストとして降水と気候変動を研究するラオ・コタマルティだ。「カリフォルニアでは雨が激しさを増しているので、その影響を実感できるでしょう」 現在のインフラでは今後の豪雨に耐えられない 豪雨が特に危険となるのは、同じ場所に短時間で多くの雨が降る場合だ。地表が水分を吸収する速度を上回って雨が降ると、短い時間で氾濫に至る「フラッシュフラッド」が発生する。ふたつの暴風雨が連続して発生した場合などには、土壌はすでに水分を吸収してしまっているため、それ以上の雨を受け止めることができなくなるのだ。 こうした災害は、高地などの降雪が多い地域で深刻化している。今年6月に発表された論文によると、山岳地帯や高緯度の地域では、気温が1C°上昇するごとに、大規模な降水が発生する確率が15%増加する。これはクラウジウス・クラペイロンの式から推定される数値の倍以上だ。 雪不足に苦しむ欧州のリゾートは「スキーに頼らない未来」を模索している BY TRISTAN KENNEDY 「大雨の問題、特に洪水がインフラにどの程度のダメージを及ぼすかの問題について考えるとき重要なのは、降っているのが雨なのか雪なのかという点です」と語るのは、ミシガン大学の気象学者であり論文の主著者であるモハメド・オンバディだ。「地球温暖化の影響は、空気中の水分量を増加させ、雨を増やしているだけに留まりません。極端な降水をみていくと、それが雨である割合が増え、雪である割合が減っているのです」 雪よりも雨の割合が増えると、そのぶん災害も深刻化する。雪の蓄積は緩慢であり、溶けるのにも時間がかかるが、大雨が降ると水は一気に放出される。8月にヒマラヤ山岳が被害を受けたように、山岳地帯では土砂崩れが発生してしまう。「研究者たちが収集した予備データによると、8月の土砂崩れが発生した大きな原因は、降水が雪ではなく雨となったことにあるとわかります」 水害対策として、都市の「スポンジシティ」化が加速する BY MATT SIMON ニューヨークの洪水は、都市の「スポンジシティ」化の重要性を改めて浮き彫りにした BY MATT SIMON 現在のインフラは、こうした大規模な洪水に対応できるようには設計されていないため、多くの人命がリスクに晒されている。一般的な都市計画では、洪水を避けるために雨水を可能な限り素早く排出する工夫が施されている。しかし雨が激しくなるにつれ、水路や下水だけでは十分な速さで水を排出できなくなってしまう。 最近では、“スポンジ機能”をもった都市の開発が進んでいる。つまり、コンクリートのように水を通さない素材で覆われた地表の割合を減らし、水が蓄積してしまうのを避けるのだ。そして緑地を増やし、雨水を帯水層まで染み込ませることで、後から再利用できるようにする。「これからのインフラは、地球温暖化によってもたらされる変化に対応できるよう設計されなければいけません」とオンバディは語る。「これから10年、20年、30年後に起きることにも、対応できるようでなければいけないのです」 (WIRED US/Translation by Ryota Susaki/Edit by Mamiko Nakano) Related Articles flooding in new york ニューヨークの洪水は、都市の「スポンジシティ」化の重要性を改めて浮き彫りにした ニューヨークで発生した洪水は、温暖化で多発する大雨に旧来の下水システムが対応できてない現状を浮き彫りにした。こうした事態に備えるべく、都市は水を吸収しやすい「スポンジシティ」へと進化する必要がある。 Aerial of Flooded L.A. River カリフォルニア州が取り組む洪水対策、鍵は「地中」にあり 気候変動の影響で深刻化する洪水被害を軽減すべく、水を地中に逃がして吸収させる「スポンジシティ」化が世界各地で推進されている。この対策を加速すべく米国のカリフォルニア州では、雨水を地下に貯めるプロジェクトや透水性の高い舗装材の導入が始まった。 muddy desert in Nevada 気候変動は「バーニングマン」も襲う:豪雨で“泥沼”になった伝説のフェスの転機となるか ネバダ州の砂漠で開かれる伝説のフェス「バーニングマン」。今年はハリケーンの影響で豪雨に見舞われ、テック業界の金持ちや快楽主義者たちが集う会場が文字通り泥沼と化す“大惨事”となってしまった。 地球温暖化によって豪雨が発生するメカニズムとは 雑誌『WIRED』日本版 VOL.50 「Next Mid-Century:2050年、多元的な未来へ」発売! 『WIRED』US版の創刊から30周年という節目のタイミングとなる今号では、「30年後の未来」の様相を空想する。ちなみに、30年後は2050年代──つまりはミッドセンチュリーとなる。“前回”のミッドセンチュリーはパックスアメリカーナ(米国の覇権による平和)を背景に欧米的な価値観や未来像が前景化した時代だったとすれば、“次”のミッドセンチュリーに人類は、多様な文化や社会や技術、さらにはロボットやAIエージェントを含むマルチスピーシーズが織りなす多元的な未来へとたどり着くことができるだろうか? 空想の泰斗・SF作家たちとともに「Next Mid-Century」を総力特集する。詳細はこちら。

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