「街全体がゆがんだ」 液状化被害の理由
震源から遠くても…「街全体がゆがんだ」 液状化被害の理由

能登半島地震では、震源から遠く離れた石川県内灘町や新潟県、富山県で液状化現象が発生した。国土交通省によると、3県での宅地の被害は1万件を超える見込みだという。遠地での液状化はどんな場所で起こったのか。
平衡感覚を失うほどの傾き
能登半島地震の震源から南西に約100キロ。石川県内灘町は、金沢市の北に隣接した人気のベッドタウンだ。砂丘が伸びる海岸線と、淡水湖の河北潟に挟まれた南北に細長いエリアに、多くの住宅が建設されている。
1月1日の地震で町は、震度5弱だったものの液状化が発生。道路は波打ち、住宅や電柱が大きく傾くなど甚大な被害が出た。2月5日現在、町内では全壊を含めて計1444棟の住宅被害が確認されており、その多くは液状化が原因とみられている。
記者は1月下旬、特に被害の大きかった同町西荒屋地区を訪れた。住宅街を貫く県道は車が横転するのではないかと感じるほど傾き、下車すると平衡感覚を失ってふらついた。閑静な住宅街は一帯がゆがみ、地震前とは全く違う光景が広がっていた。
「この家は捨てます」
地区に住む元大工の新田一久さん(75)は、自宅の前で力なく語った。液状化によって自宅全体が沈下して道路側に傾き、車庫に止めていた車はタイヤがほぼ隠れるほどの高さまで土砂に埋まっていた。
元日の地震発生時、子どもや孫ら計14人で自宅にいた。大きな横揺れを感じ、全員が急いで外に飛び出した。揺れが収まると、1分近くかけて、車庫の中にあった車が沈んでいき、それとは逆に目の前を通っている道路がじわじわと浮き上がっていくように見えた。
周囲の至るところから、泥水が噴き出し、傾いたアスファルトの上を滑るように流れてきた。電柱もゆっくりと傾き始め、突っ張った電線がピシピシという音を立てていた。「街全体がゆがみ始めているという感じだった」と振り返る。
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